去年のこと
「調子が良くなりません」
浅い呼吸の中で私は目の前の医師に訴える。必死の思いで、自分の体をひとつにまとめあげているが、何かきっかけがあれば本当にばらばらになってしまいそうだった。
「お薬、増やしてみましょうか?」
医師が語りかけてくる。6mgのエビリファイや100mgのクエチアピンが体の中でどのような作用を及ぼしているのか私には分からない。良くならない体で、途方に暮れながらここにいるだけだ。苦痛に耳を傾けてくれる医師なのか、そうでないのかを、患者は敏感に感じ取る。目の前の医師には、私の苦痛を受け取る気持ちはないと知っている。それは以前漏らしたあるひとつの苦痛を、彼女は次の診察でなかったことにしたからだ。無視に近い。でも、彼女には彼女の生活や人生や心があるわけで、患者としての節度は守らなければならない。またひとつ、無意味な診察が終わる。
いや、このぬるっとした診察が意外といいのか? 日常みたいに。
…んなこたあねえか。
3月に転院するつもりだ。
本を読み、感銘を受けた作者の診療を受けることができる。期待しすぎず、前向きに。