海へ行きましょう

猫の肉球の感触を楽しむような、そんなブログを本当は書きたいのだが

ただいまJapanとJapanese

 

私は今、豪華客船「にっぽん丸」に乗り太平洋の上をメキシコを目指して進んでいる

 

という、世界線もあるにはあった。

が、私は日本に残った。

 

『世界青年の船』という事業の参加青年として(補欠で)選ばれて、10か国の海外青年と交流を図りながら1ヶ月半を海の上で過ごす予定ではあった。

英語もそれなりに練習し、和太鼓に励み、お土産として箸や松の栽培キットを買い、円をドルに変え、馬鹿デカい荷物を横浜埠頭に送ったが、土壇場で辞退を決めて代々木のオリンピックセンターから帰ってきた。一見、ただいなる労力が無に帰しただけの行為かもしれない。

 

ただ、私としては事前研修と合わせてたった10日足らずでも、「世界青年の船事業のメンバーとしてそこにいた」ことでやっと体感できたことが多かったと感じてる。

備忘録として簡単に書いておこうかなって

思った。

 

発見①は、私は日本語が好きだということ。

母語が好きだと言い換えることもできるかも。

英語を話しているとき、私は言いたいことを頭の中で簡単な日本語に直してから、それを英訳する形でものを話していた。(自分の英語コミュニケーション能力の低さは置いておく)。奇妙な表現になるけど、私は英語を話させられていたと思う。

私は「ウザい」(死語だが)という日本語を使うことが少ない。「むかちん、、」と感じても、できるだけ正確に自分の気持ちを言葉にして伝えたいため、一度冷静になる。で、伝える前に私が感じたものはなんだ?理由はなんだ?と考える(一瞬だけど)。

その結果、あー理不尽なことをされてると感じてるんだわ、とか、私は自分を傷つけてほしくないと思ってるんだ、とか、どこからどう見ても非難されるべき行動ですね、とか、色々感じてるわけです。まあある程度みんなそうだと思う。

でも英語だと、angryとかfrustrated とかsadとかしかわからないし、本当に伝えたいことに目をつぶって、はじめに言葉(単語)ありきでそこに合わせていく、ことしかできなかった。

何度も言うが、私の言語能力の低さは一度脇に置いておく。

ただ、

英語の能力が低い=英語を勉強するモチベーションが低い=英語を勉強することが義務になっている(金や仕事のため)

という私だけではなくて多くの日本人に共通して生じている事象は、まず日本語への興味や傾倒や貪欲な執着が、逆説的だけど薄れていることからくるのではないか、?

言語って、単なるツールなんですか?

「みんなに伝わる簡単な日本語」ばかりを使っていて楽しいのか?

「コミュニケーションのためだけの英語」に紛れてはいたけれど、「コミュニケーションのためだけの日本語」も存在していた。まあそれは事業の中だけでなくて、日常生活にも多いけれど、、。

 

私はもっともっと日本語(大きな目線で言えば、言語)に愉しみを見出したい、、。

いや私は楽しんでいるけど、多分まだまだいけるんだと思う。私は変な日本語、はみでた日本語を使い続けるよ。楽しいから。だからブラックユーモア系日本語漫才も大好きだ。死ぬまで行間を読み取り続ける人生をやめないのだ。

 

発見②は、集団生活が苦手。

これはわかっていたことやんな。無理なものは無理なので諦めよう。ともかく、240人は多すぎた。

4人くらいがベスト。

 

発見③。PCをはじめとする電子ガジェットが嫌い。

これもわかりきっていたが、英語と同じでやらなければ市場価値が高められない…!と、思い込む呪いにかかっていたため、捨てきれずにいたことである。

ちなみにスマホも嫌いなので、スマホを肌身離さず持ち歩くことになるであろう仕事につくことがもう、大丈夫かなーという感じ。

まあ文字を打つくらいなら、ギリギリ耐えられるかな。エクセルやプログラミングやHPづくりやInstagramは、何度生まれ変わっても好きにならないでしょう。

 

やっと諦めました。私以外の誰かがやるので、私はやりません。適材適所。後ろ指なんてさされないよ。

 

 

そう、今回の経験で心の底からわかったことは、大きな意味ではこれから述べる一点に尽きる。

 

それは、

生きていくうえで、絶対にこれはやらないわってことだけ決めよう

ってこと。

Twitterとかでよく言われていることだとは思うけど、今回私はしっかりはっきり確信した。死にたいと思うくらいやりたくないことはやらないで生きていった方が良いよ。

 

私のやらない宣言は、

 

・日本語以外の言語をメインで使う場所(職場や住居)を拠点にしない

・集団生活を避ける

・電子ガジェットは最低限(ほんとうは捨てたい、いつか捨てられたらいいとすら思う)

 

 

です。これがわかっただけでも、気持ちが良い。

仕事は「勤労の義務」なのでそこそこやりつつも、人間社会は適材適所なので、「社会が私という人間に望むことは何か?」ということを常に考えながら、仕事趣味にかかわらず自分を生かせる場所に敏感になることを忘れずにこれからやっていけたらなと思いまする。

 

昨日は横浜大桟橋に行き、研修で仲良くなったルーミーを見送りました。

「日本人が120人いれば、120通りの色がある」。私の「日本に残る」という選択肢が、船の中でだれかを少しでも楽にできたら幸いです。

 

私は日本で、日本全近代文学を系統立てて読みつつ、無理のない範囲で浦和ではない日本の場所に行きます。

 

ちなみに今日はカミュの『転落』を読みました。

 

(適当でいいんですよ)

 

^^

 

 

 

ただの日記①

 

ファストフードを食べるみたいな恋愛ばかりしてきた。


自分のことを話すくらいならば、道端に転がってる石について1時間話すほうを選ぶ。心の柔らかい部分を見せないように努め、会話でも行動でも正解を置きにいく男女交際を続けてきた。そしてこれが美点ではなく欠点であることに、残念ながら薄々気づいてはいる。

 

 

この前、川越の氷川神社で恋みくじを引いた。中吉だった。


「人生のパートナーと考えたとき、『経済力』は大きな判断材料となります。確かにお金がなければ出来ないこともたくさんあります。しかし、金銭の有無のみで人を判断すれば、大切なものが見えなくなってしまいます。相手を選ぶときは、主観的にも客観的にも見て判断すると良いでしょう。」


と書いてあった。別に経済力で男性を判断なんてしていない。違うおみくじを選べばよかったと思った。でも一応、家に帰ってきてからそのおみくじに画鋲をさして部屋の壁に貼り付けた。経済力。ふーん。

 

 

気になってる人がいる。でもそれは執着なのかもしれない。その人は以前私が付き合っていた人だから。そしてもしこの感情が、単なる寂しさと性欲がないまぜになった身勝手な感情だったとしたら。怖い。私には100パーセントそうではないと言い切れる自信はない。でも、それでもやはり今でも好きで、気になっているのは本当だと思う。


そんなことを言っているが、「他に好きな人がいる」と言って相手をちぎるように遠ざけたのは私の方だ。私は往々にして男女交際を自分の都合で一方的に終わらせることがある。これは多分本当に病気だと思う。嫌われることが怖いから嫌われる前に終わらせたいという自分勝手な動機。

 

 

 

 

ハラスメントってあるよね

 

注意力散漫で卒論が書けない!

 

 


えー近頃は、ハイヒール強要するしないとか、上野千鶴子先生の祝辞とか、カ◯カの育休復帰後即転勤強要とか、ハラスメント関連の話題には事欠かないですよね。


確かに目上の人と話してると、


「あ、でもこれ以上はセクハラって言われるかもしれないからね、やめとこ笑」


的なことを言われて会話が尻すぼみになることがけっこうあります。


「女性は体力的ないからねー」

とかもアウトらしい。いやどちらかと言えば事実じゃない……?  侮蔑的な発言だとは思わんが……。女子プロバスケットボール選手とかならわかるけれども……。大変な世の中だわ。

まあ私は満員電車乗っても痴漢されたことないし、セクハラ的被害に遭ったことがないからそう言えるのかもね(鈍感である、もしくは鈍感であろうとしているだけかもしれないけれど。それか、「強い男性」に守ってもらおう、というセーフティネットを信じるイデオロギーを選択しているか)。

 


んでハラスメントのことちょっと考えてたんだけど、思い当たる節があったのよね。なんだと思いますか?


それはですね、

 


お弁当ハラスメントです。

 


ええー!なにそれー!

と思うかもしれんけど、お弁当の中身覗かれ系のアレです。


なんか思い出してちょっと書いておきたかったので書きます。

 

 

時は遡り中学生。埼玉では珍しく私が通ってた中学校は給食がなかったんですよねー。


だから毎日お母さんがお弁当を作ってくれていたと。

そんで自慢じゃないけど私のお母さんって死ぬほど料理上手で、毎日凝ったお弁当を作ってくれてたんですよね。

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ロコモコとか、ガパオライスとか、秋刀魚のチーズサンドとか、ローストビーフとか、綺麗に桜の形に型抜きされた人参とか……(料亭か!)。


まあだから、必然的なのかもしれないけど、「今日のお弁当は何ー!?」と聞かれることが多かった。

そしてみなさま、お覗きなさる。


いや違うんですよ、毎日美味しいお弁当が食べられるのはかなり嬉しかったんだ。


しかし、お弁当の中身を確認されたあとに、私がそれを食べてる姿まで見られることが恥ずかしかったのですよ……。

と、言うのも、いかんせんプロ料理人的な中身のお弁当だから、蓋をあけるとパエリアが出てきちゃう日があったりするんですよね。おおっ、パエリア!  ターメリックの黄色すご、ってな感じで。そんで、本格的だから海老とかムール貝がきちんと入ってると。それも殻付きの。まあ海老、完全に殻に包まれてたかは忘れたけど、とりあえず立派な尻尾はついてるやつよ。だからこう、周りはお箸で卵焼きをつまんでる中、なんか私だけ弁当の中身がリッチすぎて手をべたべたにしながら海老貪ってるみたいな状況が生まれてね。


え、なんかこれ自分キッショくね?  待ってわからんけど一人ダンシングクラブ?  おー、地味に恥ずい……!!


ってな感じで冷や汗かいてた。


だからお弁当食べるのは大好きだったけど、母作のお弁当があまりにもプロすぎてそれを食べる自分を見られたくない、という変な心境が生まれた。


まあ、仮に自分がへったくそなお弁当作ったとしてそれ覗かれるのも死ぬほど恥ずかしいと思うけど。だからお弁当ハラスメントってのは、リアルガチ存在する。今回はちょっと趣旨違くなってるけど。

 

 

で、そんな感じで毎日ちょっとハラスメントを意識しつつドキドキしながらも基本的にはハッピーなお弁当ライフを送ってた私。

 

 

が、事件は起きた。

 


その日は確か、お弁当の中身としては私の母のわりには普通だったような覚えがある。ので、安心して全てを食べ終え、デザート用の小さいプラスチックケースを開けると、


なんと、

 


そこには、

 

 

 

ぶどうが入っていた。

 

 

いやぶどうが美味しいってのは本当に認めます。好きなフルーツランキング上位5位までには入る。けど、マジでお弁当には適さなくないですか?????

皮を丁寧に剥き、とは言っても全部を綺麗に剥ききることはできなくて中途半端に下1/3の皮を残して口に入れ、すると果汁がほとばしり、手はベタベタ、そして極め付けは口の中に残るタネ。タネを口から出さなくてはならない!!!!  そうタネを、出さなければならない。中学生的には見られたくなさすぎる自分の姿。なんかこう、ほらよだれ混ざってない!?  ってなるじゃん??  糸引いてませんか??  ってなりそうじゃん??  だからいかによだれを分離してタネをスマートに秒速で口から出すかにいたく神経使うんですよ!!?????


そうだからぶどうは弁当に入れるべきではないと思うんだな。激ウマだけど。いや、入ってないより入ってた方が嬉しいけどさ……!!

 

 

とまあ、そんな感じでハーぶどうかあ、、、と思いつつ食べたんですね。

 

するとそんな私に一声かけてきた女がいたんですよ〜(クールポコ)

 


彼女は私を見て言ったのさ。

 

 

 

 

「七海がぶどう食べてる姿って綺麗だね」

 

 

………え?  なんと??

 


「七海がぶどう食べてるのは見れるわ」


と、目の前の友人が私に言ってくれたんですよね。実はそれが私、めっちゃ嬉しかった(笑)

 


これ、人生で嬉しかった褒め言葉ランキングマジ上位です。

 

 

 


ありがとうみやも久しぶりに会いてえ。

 


以上ハラスメントの話ではなく、しょうもないほっこり小話でした。

 

裁判傍聴のすゝめ① 覚せい剤

 

こんばんは。

みなさま、今日の夜ご飯はなんですか?


さて、私事になるが私は今年公務員試験を受けようと考えているため、これまでの人生でまったく触れてこなかった法律を勉強している。ただゆったりしすぎたため、そろそろ尻に火をつけて勉強に励まなければ受かるもんも受からない……(遠い目)。
まあ個人的な状況はいったん脇に置き、法律についての話。

「け、憲法……! お硬い文章にアレルギー反応が」と、最初は恐る恐る勉強をはじめたが、ふたを開けてみるといかんせん知的好奇心が旺盛なため、思っていたよりはおもしろかった。まあ、だるいことに変わりはないが。

そこで、「じゃあ実際に法律が使われているところを見てみるか!」という気持ちになり、友人を誘って先日、東京地方裁判所に行ってきた。
そして語弊を恐れずに言うと、まあ驚くほどおもしろかったので、この場を借りてみなさまに伝えさせていただきたい。

 

2019年1月某日、霞が関駅A1出口を出てすぐ右手にあるでっかいビル―――東京地方裁判所を私たちは訪れた。


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一般用の入り口を抜けると、まずは手荷物検査だ。ゲートを通り検査を終えると、その先に電子パネルがあり、その日開廷予定の裁判のスケジュールを見ることができる。
スケジュールの写真を撮るのは禁止なので、興味のある裁判をそこでメモする。

 

私たちは、「刑事裁判」で「新件」の裁判に絞ってメモを取った。
なぜ「刑事裁判」で「新件」なのかというと、口頭陳述が盛んで見どころが多いのと、起訴状などの読み上げがあり事件の全容をつかみやすいからだ。

また、そこら辺の詳しい理由や裁判傍聴のポイントは、こちらの『初心者でも分かる! おすすめの裁判傍聴の仕方、方法!』に書かれているので、この体験レポートを読んで裁判傍聴に行ってみようかなと思われた方は、このレポートを読んだ後に(!)是非チェックしてみてください。

↓ブログはこちら↓

harukin.com

 

さて、私たちは、
① 13:30~14:30 覚せい剤
② 14:30~15:30 大麻
③ 15:30~16:30 窃盗
の3つの裁判を傍聴した。それでは、順を追って書いていこう。

 

まずは傍聴記録① 「覚せい剤」。

 

が、初めての裁判傍聴で右も左もわからない私たちは、部屋の前に貼ってあるスケジュールを見ずに、開廷10分前に入室してしまった。そして入った直後は気づかなかったのだが、実はまだ前の裁判の途中だった(ただし途中入室自体は問題ない)。なぜなら入室して2分ほどすると、裁判長が部屋に入ってきて判決を読み上げ始めたからだ。

 

その裁判の主題は、公然わいせつ罪だった。
被告人は、50代後半くらいの後頭部の禿げかかった小さな男性。判決を聞くところによると、どうやら被告人は、混み合った電車内で自らの性器をボロンッ! と露出し、居合わせた女性らに不当に恥ずかしい思いをさせたことを罪に問われていた。「女性が恥ずかしがる姿を見て性的興奮を覚えた」との供述もあったようだ。
私は裁判長の前に立って判決を聞く男性の小さな後姿を見ながら、なんとも言えない悲しさを覚えた。

 

思い返せば女子高時代も、私自身は会ったことはないけれど、登下校のルートにたびたび「性器露出おじさん」が出没していた。
自分の性器を街中でさらけ出し、女性が「きゃあッ!」と言って恥ずかしがったり、「気持ち悪い!」と言って軽蔑したりする様子を見ることに、最高の性的興奮を感じるという性癖を持ってしまった彼らには、ああ、一体どのような過去があるのだろう。それともそれは、先天的なものなのだろうか。

また、どのような経緯であれ、「街中で性器を露出することに最高の快楽を覚える」という性癖を持ってしまったからには、自分の欲望を満たすためは罪を犯すしかないのだ。だから、社会的な制裁を受けることは、そのような性癖を持ってしまったものの宿命、とも言えるのかもしれない。

ただ、その一瞬の快楽は、他の全てを失ってもいいと思ってしまうほどに、魔力的に最高なものなのでしょうか。
性器露出おじさん、私はそれを聞きたい。

 

懲役は、1年か3年だった(うろ覚え)。

 

また、こちらの裁判はほぼ満席だったのだけど、その理由はおそらく「わいせつ系裁判傍聴マニア」の存在だ。
最前列に、それらしき方々が何名かいた。60代くらいの男性が多かった。下衆な気持ちを隠す気もなさそうで、純粋にすごいな……と思った。

 


さて前置きが長くなってしまった。
では今度こそ本当に、傍聴記録①「覚せい剤」。

 

被告人は、がっちりとした体格の、マスクをつけた短髪の男性。のちに38歳だとわかったが、年齢よりも若く見えた。
名前や住所も、大きめの声ではっきりと答えていた。起訴内容は覚醒剤の所持、使用だ。

 

そして最初に、証人喚問がおこなわれた。裁判長が「それでは証人は証言台の前へ」と言うと、私たちの横の傍聴席に座っていた夫婦らしき男女の女性の方が、立ち上がり証言台の前へと向かった。女性が着ていたスーツはしわしわだった。

 

「それでは、宣誓書を読み上げてください」と、裁判長。

 

ちなみに、証人はみな、証言の前に嘘偽りを述べないという旨の宣誓書を読みあげる決まりがある。

 

「はい、ええと…… 宣誓、良心に従って……」
と、女性は途中で、言葉に詰まってしまった。そして、ハンカチで涙をぬぐい、ひと呼吸おいて言い直した。

 

「宣誓、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」

そして、「すみません」と言ってまた涙をぬぐった。

 

答弁がはじまり、「あなたは被告人の母親で間違いないですね?」と弁護人が質問すると、彼女は「はい」と答えた。

 

涙を流したあたりで薄々わかったが、証人は母親だった。せ、切ねえ……。

 

弁護人 「被告人が覚せい剤を使用していたことを逮捕前に知っていましたか?」

 

母 「息子は大変まじめで意志の強い人間でして、だからこそ本人の意志の力を信じすぎてしまいました。私の覚せい剤についての認識が甘く、うんぬんかんぬん……」

 

弁護人 「ええと私が質問しているのは、息子さんが逮捕される前に、息子さんが再び覚せい剤を所持・使用していたことを知っていたかどうか、とうことです」(被告人は再犯)

 

母 「あ、はい。ええと…… それについては、知りませんでした」

 

とまあ、被告人の母親は終始このような感じで、弁護人や裁判長からの質問に的確に答えることができず、質問への解答というよりも、自分のふがいなさを嘆いたり息子をかばったりする発言を長々とするのだった。
もともと論理的な受け答えが苦手な人なのかもしれないが、私は事件を受けて母親が動揺している印象を感じ取った。彼女のスーツのしわも多分。

 

しかし実は、この母親の動揺には、事件の主題である「被告人の覚せい剤の使用」よりも大きな原因があったのだった。

 

その原因は、以下のやり取りを端緒として明らかになっていく。ここからは母親の的外れな受け答えは省略させていただくが、実際はほぼすべての質問に対して最初は見当違いの言い訳や説明や懺悔をしていて、弁護人を困らせていた。

 

弁護人「あなたは、事件後に息子さんから、彼自身のセクシュアリティと病気のことについてお聞きしましたか?」

 

母親「はい、息子が、そういうふうなんだ、ってことは」

 

弁護人「そういうふう、というのは、ゲイということで間違いありませんか」

 

母親「……はい、そうです」

 

弁護人「では、ご病気の方はどうでしょうか?」

 

母親「……はい、聞きました」

 

弁護人「病名は、お聞きしましたか」

 

母親「はい……HI…V、です」

 

ここからは概要を説明するが、被告人には物心ついたときから「自分はゲイだ」という自覚があった。だが、家族にカミングアウトすることはできず、専門学校卒業後は家を出て飲食店で働きながら、プライベートでは男性との性交渉を重ねた。そして、25歳の時にHIVを発症してしまう。HIVの発症も家族には言えず、被告人は孤独感や絶望を紛らわすために覚せい剤に手を出してしまい、ある日とうとう警察に捕まってしまう。

 

さてそんなことが起きたのが何年か前であり、なんと被告人はその時の裁判では自分がゲイであることとHIVに感染していることは隠し続けたのである。彼は隠し続けながら裁判を受け、刑期を終え、社会復帰を果たすも、自分が犯した罪の根本的な動機を解決できなかったため、やはり再び孤独感と絶望にのみこまれていく。その時のことを被告人は、「家族にHIVが移ってしまう可能性が怖くて、家族とは出所後も距離を置いていた。隠し続けるのは非常につらかった」と語った。

 

そうして再び被告人は覚せい剤に手を出してしまうのだが、今回は事件後に、隠すことに限界を感じていたこともあり、家族にカミングアウトしたのだった。

 

彼は、12年間、事実を隠し続けていた。

 

12年間!

 

12年間もの間、自分にとっての1番の悩み・自分という存在の核の部分を、もっとも近しい者に対して隠し続けることを想像してみてほしい。
私だったら、つぶれてしまうと思う。だけど、関係が近くて大切に思っているからこそ、言えないことって、ある。被告人の心情を想像すると、軽薄だが本当に胸が痛んだ。

 

母親は、法廷で、「ゲイ」という言葉を口にしなかった。そこから判断するに、母親はきっと俗に言う「LGBT」に対しては、嫌悪や理解できないという気持ちを少なからず持っている(た)んじゃないかな、と私は思った。

 

被告人はきっと、そんな母親の考えをなんとなく知っていて、だからこそ母親を、そして家族を悲しませたくなくて、12年間セクシュアリティと病気のことを自身の胸の奥に隠し続けた。
覚せい剤は、彼にとって精一杯のSOSだったのか。

 

さて、今回の事件後には、兄弟が呼びかけて、家族会議が開かれたようだ。そこでは、「みんなで一緒に解決に向かって進んでいこう」という結論に至った。

 

母親も、「出所後は息子と一緒に住んで、一緒にこれからのことを考えていきたい」と最後に言った。

 

また被告人が逮捕前も家族で唯一親しく付き合っていてよく会っていたという祖母も、高齢で身体はもう弱くなっているけれど、「あなたが帰ってくることを生きがいにしてそれまで生きて待っている」という言葉を彼に送った。

 

そして、「最後に被告人、何か言い残したことはありますか?」

という裁判長の問いかけに被告人は、

 

「罪を償い、帰ってきますので、それまでどうか元気で待っていてください」

 

と、主語のない一文を、裁判長をまっすぐ見つめながら、答えた。

 

 

以上が傍聴記録①「覚せい剤」の記録である。

このような、当事者以外の人間にとってはとるに足らないことかもしれないが、大きな大きな人間ドラマが、毎日裁判所では繰り広げられている。

 

きっと裁判傍聴後は、毎日のニュースの見方も変わるかもしれない。
裁判傍聴は無料である。ぜひ、一度行ってみることを私は心からおすすめする。

 

そして、次回は傍聴記録②「大麻」をお届けしたい。

 

……

 

ああ、なんか渋声の男性ナレーターを起用するようなルポルタージュ番組を意識していたら面白くなってきちゃいましたね(自分だけ)。

ただ、次回以降もめっちゃ強調しますけど裁判傍聴、ほんっとうに良かったので、特に4月から社会人になって平日に時間をつくるのが難しくなる人は、3月までにぜひ行ってみてください!!!


では、傍聴記録②「大麻」は、私が今までの人生で出会った人間の中で1.2位を争うほど「やばい」青年が登場しますので、さりげなく楽しみにしててくださるとうれしいです。

 

 

それでは、アディオス。

最低で最高なヒッチハイク 東京→長野③

なぜかクリスマスイブに1人でケーキを2個食べることになって、ウケています。


みなさまこんばんは。どのようなクリスマスイブをお過ごしでしょうか?

ヒッチハイクの旅、最終回です。ハハ……もはやヒッチハイクしたのいつだっけ? という感じがあるのも否めないですが、元気にやっていきましょー!

 


さて、山梨県にある双葉SA(行先は長野、あともうちょっと!)でトラック運転手のおっちゃんと兄ちゃん2人組に出会い、向かう方向が同じだったおっちゃんに乗せてもらえることになったのであった。


どうやらこのおっちゃんと兄ちゃんはトラック運転手仲間で、めちゃめちゃ仲良しらしく、よくSAで待ち合わせをして一緒にご飯を食べたり話したりしてるそうだ。私たちが会ったときも2人はご飯を食べるために集合していた。そして別れがたくて、食べ終わった後も1時間以上話し込んでいたらしい。マブすぎて眩しいッ(死語)。


兄ちゃんのトラックはこれから東京に向かうので、お別れだった。しかし、あたたかい飲み物をくれたし、一度乗せるのを断った後に考え直して話しかけてくれた。感謝です、ということで恒例の記念写真撮影に入る。

 


以下、Yが撮ってくれた1枚目の写真。

 

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いやこれは密会を『FRIDAY』に撮られちゃったやつ~! 最悪な写真だ。

 


確認してやや笑った私たち。まあ、Yにもう少し頑張って腕を伸ばしてもらい、いい感じの写真も撮りましたよ。

 

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さてさて、兄ちゃんと別れ、おっちゃんのトラックに乗せてもらう……んだけど、ガチの大型トラック。

「でか!!!! なにこれ、でっか!!!!!!」という言葉を馬鹿みたいに繰り返すしかない。これはワクワクする!!!

 

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写真はイメージだけど、こんな感じ。象×5体、くらいの大きさ。


Yも私も、人生で初めて大型トラックに乗ることになった。というか、運転席と助手席しかないイメージだけど2人も乗れるのかな? 大丈夫か? とすごい思った。そしてそんな気持ちを抱えたまんま私は運転席に乗り込んだ。

が、ドアをくぐった瞬間、予想以上の広さに「おお!」と驚きの声をあげた。

 

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またまたイメージだけどこんな感じ。想像していたよりも広いし、天井も高い。

軽食やDVDや、はたまたお風呂セットまで置いてあり、ちょっとした部屋のようだった。

 


Y「これは暮らせますね~」

おっちゃん「必要最低限のものは全部そろえてるよ」

私「すごい」

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部屋っぽくないですか。

 

 

イエーイ出発レッツゴー!

乗り心地は静かで、良い感じ。フロントガラスも大きく、臨場感があってアトラクションのような気すらした。


するとおっちゃんが、「彼氏いるの? ヒッチハイクなんてして心配するんじゃない? いや~、俺が彼氏だったらさせたくないけどなあ(笑) 行先長野だろ? で、どこから来たんだっけ、おお東京か。ってことはもし車持ってたとしたら、俺だったら長野まで、それが厳しかったら最悪山梨の駅まで送ってってやるけどな。だって東京から長野まで自分の車だったら3時間半とかで行けるとして、往復で7時間だろ? 仕事とか学校があったとしても夜7時くらいに東京出発したら深夜2時とかには帰ってこられるわけじゃん? 俺が彼氏だったら心配だし、それくらいはしてやるけどなあ~(笑) 何もしないで心配だけしてるのは嫌だし、彼女のためだったらそんくらいしてやるな!」と、言った。

 

うん……おっちゃん、すごい優しい、優しいよ……。

だけど、私たちは、ヒッチハイクがしたかったんや……。

そこまでしてくれたらそれはもう、ヒッチハイクでもなんでもなくなってしまうんや……。


と、思ったけれど、おっちゃんは「充電するか?」と気遣ってくれるなどとにかく優しかったので、もう、反論はいいね……という流れになりました。

 


さて、そんなこんなで諏訪SAに到着!

長野県に突入や~。


そしてここで、というかトラック中で、私たちは行き先として予約をしていた長野市(諏訪SAから1時間くらいかかる)の1166というゲストハウスに行くのは諦めた。もう21時のチェックインには間に合わない。


そこで、ビジネスホテルに泊まるにしてもラブホテルに泊まるにしても他のゲストハウスに行くにしてもなんでもいいからとりあえず高速から下りて考えよう、とYと私は決め、諏訪SAから歩いて一般道に下りることにした。

それをおっちゃんに相談すると、一般道には下りられるけど、その道のりが暗すぎてやばいということで、まさかまさかの一緒に同行してくれることになった。

どこまでも優しすぎるな……。


歩くこと約15分。

意外と長かったし、途中本当に暗すぎて「こっ、これは、黄泉の世界へ向かうトンネル……!きゃーーーーーー!!!!!」と言ってしまうくらい闇に包まれたトンネルも登場した。


はあはあ……。

そして、大きめの一般道の片隅に建つファミマに3人は無事到着したのだった。ファミマの明るさぱねえ。


ああ、本当におっちゃんには感謝しかなかった。

そこで私はリュックサックからおもむろにキットカットを取りだし、「ぜひ、もらってやってください!」と差し出したのだが、「いいよいいよ自分らで食べな(笑)」と断られてしまった。ガビーン


本当にこのヒッチハイクの旅ではキットカットは役に立たなかった。おっちゃんに差し出す前も、乗せてくれた方々に渡していたが不評だった。いやあ、お礼の品としてキットカットを選んだのはセンスが悪すぎたなと、マジで唯一反省しているので、今後このブログを参考にしてヒッチハイクをしてみようという人は気をつけてくださいね(いない)。


そして最後におっちゃんと写真をパシャリ。ちなみに疲れてて、若者への一言は聞くのを忘れてしまいました。不覚です!

 

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いや湖ちっさ。


さておっちゃんを見送り、Yと私はとりあえずファミマで夜ご飯を買うことにした。

で、夜ご飯を買い終えて外に再び出るも、2人ともなんかやる気が出ない。なんと、長野までヒッチハイクで来れた! ということで、私たちは既に達成感に包まれてしまったのであった。


ファミマのビニル袋を手にしたYと私は顔を見合わせ、微笑みあった。

 


キットカットでも、食べようか」


なんと心のゆるみ切った小休憩だったことだろうか。宿を見つけて到着してからにしなさいと、冷静な人物がいたら確実に怒られていたと思うが、残念ながら冷静な人物はいなかった。

だけど、5分くらいぼーっとしたあとYと私は、「さすがに動こう! 頑張ろう!」と再び一致団結した。

 


行先はファミマから車でなら15分ほどの場所にある、マスヤゲストハウスという宿に決めた。

そして今考えると恐ろしいのだけど、この時点(21:15)でまだマスヤゲストハウス(22:00最終チェックイン)に電話して予約状況を確認していなかった。結果としてはこの後電話してベッドを予約できたのだけど、最後の2ベットだったみたいで、つくづく運だけは本当に良いなと思った。下手したら野宿だったかもしれない……。

 


さて、ファミマを利用する人はけっこういて、直接話しかければ乗せてくれる人もいるだろうという感じだった。


ある1人の男性が車を停め、ファミマに入った。

ちょっと気弱な優しそうな人に見えたので、私は「あの人に行くわ」とYに言った。

が、Yは「待って」と鋭い声で言った。「何事や!?」と私。


「あの人、エロ本読んでる」

顔をしかめながらYは言った。


私は「やめようか」と、言った。


ということでYと私は広めの駐車場をまたウロウロ。すると、喫煙コーナーに1人の男性がいた。

「話しかけよう!」とY。だがなかなか話しかけようとしない。「くそっ! またわしか!こんにゃろ~(古い)」と若干思ったけど、もう行くしかないので「すみませ~ん」と私は一服している男性に話しかけた。


「下諏訪にあるゲストハウスに行きたくて、もし良かったら乗せて行ってくれないでしょうか……」


「……んぁあ~ん?」

 

 

 

あああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーー!!!!!!

なんかやばい人に話しかけてしまったーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!

 


と、思った。

だって目は心なしかとろんとしており、話しかけて返ってきた第一声が、「……んぁあ~ん?」ですよ?

 


終わった! 怖い!  これは、ちょっとやばいかもしれない!

と、危険信号が点滅したので、「あ、でも迷惑ですよね、大丈夫です」と言い、私は退散しようとした。が、「いや、乗せて行ってもいいよ」と返事をもらった。しかも、今度は喋り方もいたって普通だった。

 


あれ……全然普通の人……?

 


そして、結局、乗せてもらった。トランクには車椅子が乗せてあった。誰かの介護をしている人なのだろうか。


また、車内にはあるサッカーチームの旗が飾ってあった。ラジオが流れていた。


男性とは、車内で穏やかに話した。気さくで良い人だった。

 

 

男性とYが談笑している間、私は、「バカバカバカバカ!」と思い自分の頭を叩きたくなっていた。というのも、きちんと考えてみると、この男性はたとえば、仕事と家庭と介護に日々精を出していて、夜1人でコンビニに寄って一服する時間が数少ないほっとできる時間なのかもしれず、何も考えずにぼーっとしていたから目がとろんとしていたのかもしれない。さらに、「車乗せてください!」なんて言い出す女子大生が現れるなんて思ってもいないはずであり、「……んぁあ~ん?」という第一声も、考えてみればそこまで変ではない。むしろ変なのは夜に車も持たず長野をふらふらしている私たちのほうである!


一瞬でも、「やばい人だ!」と思ってしまって、「バカバカバカバカ!」という心境だったのだ。


まあ自衛は大事なので、自分を責めることではないけれど、なんだかシュンとしてしまったのだよ〜。


さて、別れ際に写真をまたパシャリ。

 

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マスヤゲストハウスの近くまで送ってくれた。はああ、ありがとうございました( ;∀;)  そして、早まった判断をしそうになり大変失礼いたしました……。

 

 

 

そして、

ついに、

てくてくてくてく……、

歩くこと約5分。

とうとう!

長野県諏訪郡にある、

マスやゲストハウスに、

到着しましたーーー!!!!!(≧∇≦)

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ああ、ここまで来るのにいろんな意味で大変だった(笑)

 

 

 

そんでこのマスヤゲストハウスがまた、素敵すぎたのであるが、それはまた夢の中のお話。

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ちなみに帰りはバスで帰りましたとさ。

 

ではでは、メリークリスマス🎄

最低で最高なヒッチハイク 東京→長野②

さて、忘れたころに続きを書く。

 

というのも最近は非生産的なことばかりに気を取られていて、ブログどころではなかった。

主に、ケンコバのフェロモンにメロメロになっていたおかげで、色々なことに手が付かなかったのだ。

 

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ああ。彼女さんと結婚してしまうのだろうか……いやもしそうなったらめちゃめちゃおめでたいことですが!( ;∀;)

 


まあ、本題。

そう私は先日人生で初めてヒッチハイクをしたのだが、予想以上に楽しかったのでその行程を記録していたのだった。


が、前回ブログを書いた結果、心を痛めたことがあったので釈明文をまず。

 


なんと、今回の旅の連れYのお母さまがこのブログをご覧になられたのである(ひえ~)。いやはや、可愛い娘が危険を顧みずにヒッチハイクをしていたこと(Yはヒッチハイクで長野に行くことをお母さまに伝えていなかった←ったく)を知ってしまうだけでも衝撃を受けられただろうに、加えて、若い女であることをわりと武器にして(ここは強調しますが愛嬌を振りまいただけでそれ以上のことは一切しておりませんしされておりません乗せてくれた方々に敬意を払う意味でも一応)バンバン男の人の車に乗せてもらっていたこともバレてしまったのであるよ……。

 

お母さま、ご心配をおかけし、申し訳ありません!!!

でも、Yと行けたからこそ、このヒッチハイクの旅が充実したものになったことは間違いありませんし、「かわいい子には旅をさせよ」という慣用句が古くから伝わっていますことですし今回ばかりは目をつぶっていただきたく……そしてつまらないものではありますがこちらロクシタンのハンドクリームでしてどうぞお納めください…………

 


ああ、Yのお母さま〜。

 

 

 

さて話は戻り、女子大生2人㏌談合坂SA。車の数は平日の夜にしてはまあまあ、というところか。駐車場稼働率35パーセントくらい。山梨ナンバーや諏訪ナンバー、そして長野ナンバーの車も停まっていた。またこのとき時刻は18:30くらいで、予約していた長野市にあるゲストハウスに21:00までにチェックインできる可能性は低かった。完全に無理、というわけではないが到着できたとしてもギリギリライン。しかし、話し合いの結果、とりあえず行けるところまで行って最悪2人でビジネスホテルかラブホに泊まろう、という案に落ち着いたため、私たちは先を急いでいた。

 


そこで、サンシャイン池崎のいとこ(仮)と15年後のナオトインティライミ(仮)と別れたあと、一息つく間もなく、Yと私は早速次の車を探しはじめた。

 


陣取った場所は、ほとんどの車が通るSA出口の少し手前。そこで、長野と書いたスケッチブックを掲げる。

 


また、実は、この時点で2台を乗り継いだ私は、ちょっとしたヒッチハイクのコツを覚えていた。ズバリそれは、ただスケッチブックを掲げて立つのではなく、同時に、なるべく焦りと悲壮感と申し訳なさをにじみ出すように心がけ、そしてフロントガラス越しに運転手をじっと見つめてわかるかわからないかの角度でぺこりと会釈をするというものだ。

これをすることによって、同情を誘うことができるし、それとな~くこちらが最低限の礼儀を備えていることも伝えられる。できることはなるべくやってみるべきである。何事に対しても(意識高え)。

 


5分くらいが経ち、すると、私たちの目の前に1台の車が停まった。おお! やったー!


助手席の窓が開き、「双葉SAまでで良ければ乗せてくよ」との言葉をいただいた。スーツを着た会社員らしき男性3人。しかもこの方々は、一度は私たちの前を通り過ぎたのだが、「やっぱりかわいそうだし乗せて行ってあげるか」と思い直し、なんと戻ってきてくれたのだった! これは、やはり、会釈の効果だな?(ちがうか笑)

 

さて、車に乗り込み、聞くところによると3人はサラリーマンで、東京での研修の帰り道のようだった。

どうやら朝も早かったみたいで、車内の空気から3人の疲れがひしひしと感じられた。はわわ……。

しかしそれにしても、知った情報から判断するに、1台前に乗せてもらったサンシャイン池崎のいとことナオト(以下略)の2人よりも、今回の3人は社会的な信用度の高い会社で働き高いお給料をもらっているであろう方々だったけれど、前の2人よりも、なんか、楽しそうじゃなかった。

もちろんめちゃめちゃな早起きでコンディションが悪かったのだろうし、私が見たのはあくまでもその人たちの一面、一瞬でしかないのもわかっているけれど、それでも、3人は人生に疲れているようにみえた。

 


私とYは、四年制大学に通っている。だから、この先歩んでいく人生の可能性としては、サンシャイン池崎のいとことナオト(以下略)の2人の生活(肉体労働者)よりも、どちらかと言えば3人のサラリーマンらの生活に近いものになる確率の方が高い。

 


そしてそもそも私はサラリーマンになる気満々だしサラリーマンをディスる気持ちはみじんもないけれど、なんだかちょっと、考えてしまった。

 


まあなんにしろ3人とも楽しく話し、恒例の若者へのアドバイスもちゃっかり頂戴したのだが。

 


「明日やろうはバカやろう」

 


ああ、私はまだまだバカやろうだなあ。

 

 

 

さて双葉SAに到着。いつものように、「もしよければ一緒に写真を撮っていただけないでしょうか」とY。

みなさま、快く応じてくださった。パシャリ。

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と、ここで「じゃあ俺のスマホでも撮ってもらおうかな」と3人のうち2人がおもむろにスマホを取りだした。

ふと、2人のスマホのホーム画面が見えた。どちらのホーム画面も、かわいいお子さんの写真だった。

 


私は、ハッとした。「そうか、この人たちには守るべき家族がいるんだ」と。

きっと、彼らは家族のために毎日働いている。私たちには見せない表情をきっと家族の前では見せてる。

人生、選ぶものがあればそれだけ捨てるものもある。

そしてこれから先私たちも、様々なものを得て様々なものを捨てるだろう。

私は、自分が選んだものに誇りを持ちつつも、他人の決断にも敬意を払える人間で在りたいと、この時再確認したのだった。

 

 

 

そして3人にお礼を言って別れ、双葉SAに私たちは到着した。19:40。そろそろ21:00までに長野市に到着できる見込みは本当にゼロに近くなってきた。けれども、とりあえず行けるところまではやはり行きたい。

しかし、圧倒的に談合坂SAと比べて車の数が少ない! 駐車場の稼働率は10~15パーセントほどだった。

ゆえに、Yと私は、直接声掛け作戦を実行することにした。

 


長野市までは無理でもせめて諏訪SAまでは行きたいということで、「長野」と書いたスケッチブックに加えて新たに「諏訪」と書いたスケッチブックも用意し、その2枚を掲げながら人々に話しかけに行った。

とりあえずそっちの方面に行きたいのです! ということを伝えたくて、少しでも可能性を高めたくて、2枚を掲げた。

 


しかし、玉砕。玉砕。玉砕。

 


いやあ、やはりもう時間も時間だし厳しいか……、と渋い気持ちでわたしはデコにしわを寄せた。

Yもきっと、同じ気持ちだろう……と思いため息をつきYに声をかけようとすると、

 


「あ、ちょっとこれやっていい? 好きなんだよね(笑)」

 


と言って彼女が指をさす方向を見ると、

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山本勘助~。

 


まったく、陽気なヤツ!!!!(好きです)

 

 

 

さて、とはいってもまあまあ行き詰ってしまった。

どうしようかねと思っていると、前方からさっき「方向違うんだごめんね~」と断られた兄ちゃんが、「お姉さんたち!」と言って近づいてきて、ビニール袋をぐっと差し出した。

 


「乗せてってやることはできないけど、差し入れだけでも。寒いでしょ」

と言ってホットレモンとミルクティーをくれた。

 

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「嬉しいね~! 人ってあったかいね(^v^)」と、Yは言った。

 

 

 

そしてまたYとわたしは立ち上がり、諦めずに他の人にも声をかけようと食堂の入口へ向かおうとしたが、すると「お姉ちゃんたち、長野に行きたいの?それとも諏訪に行きたいの?」と、これまたさっき話しかけて断られた別のお兄さんが声をかけてくれた。しかもこのお兄さんもあったかいお茶をくれた(優し!)

 


「いや、目指してるのは長野なんですけど、最悪諏訪まで行って電車を使おうかなと思ってて」

と説明すると、

「長野と諏訪ってけっこう距離あるし、方向も違うからどっちやねん! って思われてるよたぶん」

と、助言をもらった。

 


えええええ、と思い調べてみると、確かに長野市と諏訪、けっこう距離があった。

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良かれと思って2枚掲げていたが、逆に紛らわしかったのか……なるほど……と、お兄さんに感謝。

そこへお兄さんの連れのおっちゃんが合流し、私たちの希望をさっきよりも詳しく話すと、諏訪SAまでなら行けるよと提案してくれた。

 


「マジでありがとうございます!!」と、心の底から感謝し、Yとわたしは乗せてもらうことにした。

 

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ヒッチハイクの旅は続く。

 

…いや長えよ!

 

 

 

 

 

最低で最高なヒッチハイク 東京→長野①

実は先日、ヒッチハイクで長野県の諏訪というところへ行ってきた。

 

2018年11月28日、わたしは出席カードを友人に託し4限の非文字媒体論を早抜けして明大前駅へと向かった。

 

16:30、明大前駅でYと合流。

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そしてこちらが今回の旅の相棒であり、幸せの体現者としてこの世界に颯爽と君臨するYだ。

 

Yは、なんてったってすごいぞ。

たとえばYを無理やり一言で表現しなければならないとしたら、

 

ハッピーハピハピサンシャイン☆スマイルボンバーエブリワンッ❓💖 はーい!!!リピートあふたみ〜〜〜☺️\\\Power to the people ///

 

こんな感じか。……いや、まったく足りないな。世界中のシアワセを胸いっぱい抱え、行く道行く道にそのカケラを落としていく眩しすぎる太陽人間だ。

 

17:00、明大前駅から歩いて高架下の一般道へ。

2枚の画用紙を用意し、1枚にはでっかく「長野」と、もう1枚にはでっかく「方向」と書く。とにかく目立つように。「方向」と書いた画用紙は、停まってくれるターゲットの層を拡げるのに役立つそうだ。これはYとわたしの共通の友人であり、先日世界一周の旅を終えて日本に帰ってきた旅好きのKちんが教えてくれた。またそしてKちんはもう1つ、「男の人だけの車には乗らないようにすると安全だと思うよ!私はそうしてる!」というアドバイスもくれた。たしかに自衛は大切だと、Yとわたしは神妙な面持ちで確認し合った。

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じゃーん、ヒッチハイクのはじまりはこんな感じ。もう暗い。17:10くらい。目標は「1166」(名前の由来なんだろう)という長野市にあるゲストハウス。予約はしたが、チェックイン時刻は21:00。

計画性は、ないーーーーー。

 

さて、画用紙をかかげるも、車はなかなか停まってくれない。

「いやマジで行けるのか?」

声には出さずとも2人の心には不安の影が。それもそのはず、どちらもヒッチハイクは人生で初めてだもの。

そこへ、男子大学生らしき男が2人歩道からわらわらとやって来た。

 

「えwwwヒッチハイクすかwwwいや、オレらはやったことないっすけど、ホントにやる人いるんッすね〜www」

 

チャラめの煽りを受ける。でも「頑張ってくっさいwww」と応援の言葉をいただく。語尾にはいちいち草。 

 

するとその5分後くらいに、わたしたちの前に1台の車が止まる。

 

「八王子SAまででよければ乗ってくか?」

 

助手席の窓が開き見えたのは、世界で初めて無農薬・無施肥のリンゴの栽培に成功した奇跡のりんごでおなじみの木村秋則さん……似のおっちゃんだった。

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木村秋則さん。

 

さて先頭で胸張って画用紙掲げてたわたしは、隣のYと目を合わせるまでもなく、

「え!!!ありがとうございます〜💖はわ〜😂ぜひお願いします〜」

といきなり女丸出しで嬉々として後部座席へ乗り込む。

Yも、「ありがとうございます〜☺️♬」と愛嬌たっぷりに応じる。ナイス連携プレーだ。

この瞬間、2人の間で「男の人だけの車には乗らない」という約束は暗黙の了解のもと消えた。ラララ〜。

 

なんかもう、とにかく早く出発したかった。あと言い訳するなら「絶対善意のおっちゃんやろ! 」という直感があった。まあ言い訳だが。

 

「出身地はどこですか〜?」

1台目なので、Yの質問も唐突でなめらかさがない。

「沖縄だ〜ガハハ」

沖縄出身のおっちゃんだった。

 

わたしは、「22のぺーぺー女子大生にこれからの人生のアドバイスってないですか?  人生の先輩に出会って、アドバイスもらおうってのが今回のヒッチハイクの裏テーマだったりするんですよね〜」

と聞いた。

 

「つらいときこそなんくるないさ〜だよ。人生なんだかんだ、なんとかなるから」

 

説得力が、あった。

格言①「つらいときこそなんくるないさ

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八王子SAでパシャリ。

どうだろう、木村さんを感じませんかね。

 

それから木村さんたちとバイバイして、YとわたしはSAの出口付近で再び画用紙を掲げはじめた。が、なかなか車は止まってくれない。

ショボーン……とはならず、写真を撮って遊ぶ変な勇気のありすぎるわたしと前向きすぎるY。

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さてそこで作戦変更。トイレの前へ。なんでかっていうとトイレにはSAに寄るほとんどの人が行くし、ただ車を待つより積極的に働きかけることができるだろうと判断したからだ。

 

Y「ちょっとトイレ行く」

 

突然、Yがトイレに行っちまった。いやお前が行くんかい。いや冷静に行くよな。すまん。

Yは、「わたしがトイレから帰ってくるまでの間に次の人見つけたら100万円あげる!」という言葉を残していった。

 

ムムッ!  がぜんやる気。

 

でも実際1人で画用紙を掲げるのは想像以上に恥ずかしかった。だが、そんなことは気にしてイラレナイ。100万もだけど、この時点ではまだ全然21時までに長野へ着くことを諦めてなかった。

男子トイレから出てくるメンズにちらっと視線を送り、ふっとそらし、恥ずかしげに俯く。まる吉原のNo1花魁のようにーーー。

すると、

「途中までしか行けないけど、乗ってくか?」

と、クソ寒いのにアイスクリームにパクつくサンシャイン池崎……のいとこ(いるんか?)くらいの類似度を示すあんちゃんが声をかけてくれた。

 

「いいんですか?あっ、ちょっともう1人いるんですけど、大丈夫ですか?あっ、もう来るんで……」

と話してるところにYがカムバック。

 

おおやるやん、とでも言いたげな表情のY。

「いつか100万円あげなきゃね〜笑」

Y、わたしにそっと耳打ち。

 

【悲報】ワイ氏、大好きな彼女に手のひらで転がられてるンゴwwwwwでも童貞だから転がされるの楽しすぎwwwwwwwww

 

 

さて池崎さんたちの車に乗車。

 

「いや〜オレもこんな年になっても作業着着てるとは思わなかったよ〜〜、ネクタイ締めてスーツ着てると思ってたけどなあ」

 

池崎さん、言葉とは裏腹にめちゃくちゃ楽しそうにそう語る。

 

そして話は池崎さんたちがどんな人生を歩んできたかにうつっていく。

 

「結婚って、どうなんですか?」

無邪気にYは聞く。

 

「女はねえ、子どもが生まれると変わっちゃうんだよなあ。奥さんにとって、いちばんはやっぱり子どもになっちゃうね……」

 

池崎さん、いろいろあったんだろうなあ。Yとわたしは、しみじみ。

 

つづいてナオトインティライミの15年後(生きてるか?)こんな感じかもなというもう1人のあんちゃんにも結婚について聞く。

 

「まあ優しいひとがいいよな。それと、女の場合はコレだな」

言いながら親指と人差し指をくっつけたハンドサイン、を出す。

 

確かにお金は大事、なんだろうなあ。Yとわたしは、しみじみ。

 

「そういえば優しいひとがいいってお前この前も言ってたよな笑」

 

「ああ、そうだよ。諦めてない笑」

 

「夢物語夢物語!  アハハハ!」

 

ほんとに、仲良さそうだし仕事帰りで疲れてるかなとは思ったけれど終始楽しそうな2人だった。

 

「いや〜、ほんとに乗せてくれてありがとうございます」

「捨て犬かと思ったもんな」

「かわいそうすぎて『乗せてやろう』って即決したわ」

「まあ、女じゃなかったら乗せないけどなwww」

「クソババアだったらぜってえ乗せないなwww」

「クソババアになる前にいろんなこと楽しみな」

「うわ〜わたしたちもいつかはクソババアになるんかなあwww」

「おう、なるなる!  みんなクソジジイとクソババアになるぞ〜!」

 

ワハハ!

 

格言②「みんなクソジジイとクソババアになるぞ〜!」

 

そして車は談合坂SAへ到着。

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またもや1枚パシャリ。

 

「長野ナンバーの車に直接声かけるといいぞ〜!」と言い残して2人は去っていった。

 

ああみなさん、最低で最高なクソジジイ&クソババアになりましょうね。

 

ヒッチハイクの旅は続く。

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